スノーボーダーにとって、ステッカーは「単なるシール」ではありません。この記事では、スノーボードにおけるステッカーの存在や、ステッカーチューンテクニックをご紹介します。
ステッカーチューンはスノーボードで最も自由な自己表現
新しいボードを手に入れたら、ステッカーで飾る。これもまた、スノーボーダーの嗜みです。僕らはこの作業を「ステッカーチューン」と呼んでいます。
ステッカーチューンの主な目的は…
- ・自分だけの特別な1本に仕上げる
- ・ライダーやブランドへのリスペクト
- ・所属するチームやショップのPR
- ・ゲレンデでの取り違えや盗難防止
…などが挙げられます。
こだわる人なら、ニューボードを予約したらすぐにステッカーのレイアウトを考え、ひと夏をかけてコツコツと準備を進めます。また、何年も乗り込む中で、徐々にステッカーを増やしていく人もいます。
いずれにしても、作業時間が長いほど、そのボードに対する愛着も高まっていくものです。
買うか、もらうか、作るか
スノートリップの記念にステッカーを買い集めたり、仲間と交換したり、自慢しあったり…。ステッカーはスノーボーダーのコミュニケーションツールとしても大きな役割を果たしていると思います。
著作権リテラシーが高い現代っ子たちは驚くかもしれませんが、かつてはブランドロゴステッカーを堂々と偽造販売していたショップも珍しくありませんでした。本物か偽物か、そんなことはお構いなし!というオフライン時代の話です。
現在は、ネットショップやフリマサイトの発展により、欲しいステッカーが高確率で入手できるようになりました。また、家庭用のカッティングマシンや、スマホから気軽にステッカー製作ができるサービスも増え、自作する楽しみも加わりました。
中には、カッターでカッティングシートを切り出す手作業派も健在です。
仲間と結成したサークルのオリジナルステッカーを作ったり、好きなライダーのステッカーチューンを完コピしたり、ボードのグラフィックスを丸ごとラッピングしてしまう痛板のようなものまで、ステッカーを用いたスノーボードのカスタマイズは、ますます多様化しています。
プロライダーとステッカーの関係
僕らが憧れるステッカーチューンと言えば、やはりトップライダーたちのボードですよね。
国際大会を転戦するプロスノーボーダーのボードには、たくさんのステッカーが貼られています。その多くは、彼らを支えるスポンサー企業のものです。
選手たちが使用するスノーボード関連ブランドを筆頭に、RED BULLやMONSTER ENERGYといった飲料メーカー、出身国の企業まで…。1人の選手がいかに多くの契約と支援によって活動できているのかが伝わります。
当然、選手が活躍すればするほどステッカーの広告効果は大きくなります。また、「いつものステッカーが貼られていない!」「あの企業のロゴが貼ってある!」といった変化も、選手と企業との契約状況や移籍の情報が得られるため、僕たちは目を凝らして常にウォッチしているのです。
スノーボードを職業にする土台を築いたクレイグ・ケリー
スノーボードの「板」が広告の場となった背景には、あるスノーボーダーの働きかけがありました。誰もが認めるレジェンド、故クレイグ・ケリー氏です。
彼が独学でスポンサーフィーを学び、スノーボードという遊びをプロスポーツの域に押し上げたことは有名な話。そしてそれは、たった30年前の出来事です。
彼はスポンサー企業に対し、マガジンや映像作品に自分の姿が露出した場合の報酬を事細かく交渉したといいます。
また、ジェイク・バートンは、クレイグ・ケリーがメディアを賑わせたなら(それが良い話題でも、悪い話題でも)喜んで支払いに応じたそうです。
ビッグステッカーはヒーローの証!?
最も露出が多く、最も広いスペースとなるスノーボードのノーズにはビッグスポンサーのステッカーが貼られます。
ノーズを飾る大きなロゴステッカーは、通常非売品であることが多く、僕たちが入手出来るのは商品としてリリースされる小さなサイズのステッカーばかり…。
そのため、(どんな手段であろうと)ビッグステッカーを入手してノーズに貼ると、ゲレンデで羨望の眼差しが向けられるのでした。
プロに聞く!正しいステッカーの貼り方
苦労して手に入れたステッカーだというのに、貼り損じて台無し!という経験、一度はありますよね?僕も過去に何度も失敗してきました。
MOJANEユーザーの川村啓史くんは、カッティングシートを扱う職業柄、毎度見事なステッカーチューンを完成させています。単純に、羨ましい…。
そこで今回、ニューボードにステッカーを貼るところを見学しながら、貼り方やコツを伝授してもらいました。
道具
ステッカー以外の七つ道具。
カッター、ハサミ、定規、マスキングテープ、脱脂シート、スクレーパー(ラバー製のヘラでも可)を用意します。
いずれも、100円ショップやホームセンターで手に入るものばかりです。
カッティングシートタイプのステッカーは、切り抜かれたステッカーが台紙と粘着フィルムに挟まれています。
今回使用したステッカーは、川村くんがマイボードの形状に合わせてロゴデータをレイアウト&出力した、職権乱用タイプのオリジナルステッカーです。
手順
①作業はボードが安定する場所で行いましょう。ステッカーを貼る部分を脱脂シートで拭きます。ボードに付着した指紋や油分をしっかりオフすることでステッカーが剥がれにくく、長持ちします。
貼る位置は感覚でも良いですが、トップシートのグラフィックスによっては定規で並行や角度を決めましょう。
②ステッカーの端をマスキングテープでボードに固定し、スクレーパーでステッカーの表面を軽くしごきます。
これは、平面のステッカーを曲面に貼るときのテクニックです。
ビンディングやヘルメットなど、立体的なアイテムに貼るときにも、このひと手間でシワが寄りにくくなります。
③固定した逆サイドの台紙を少し剥がして折り、フィルムの粘着面をボードに貼り付けます。まずは中心を押さえ、内から外へ空気を逃がすようにスクレーパーをやさしく滑らせます。
最初から力を入れてこすってしまうと、シワや空気が入る原因になります。
④ステッカーが固定されたので、マスキングテープを外し、ステッカーの裏側から台紙を剝がしながら同様の作業を繰り返します。
もしも空気が入ってしまっても慌てずに。フィルムを浮かつつ、行ったり来たり。ソフトタッチで丁寧に作業を続けましょう。
⑤全体が貼れたら、フィルムの上からスクレーパーで擦り、ステッカーを確実にボードに貼り付けます。
この時も力を入れるのではなく、軽く圧をかけながら何度も滑らせるようなイメージです。ステッカーのアウトラインや細かなデザイン部分は特に念入りになぞっておきましょう。
⑥いよいよフィルムを剥がします。フォントの角や細いライン状のデザインは破れることがあるので、様子を見ながらゆっくり剥がします。
カッティングシートに負荷がかからないよう、フィルムに角度を付けながら引き上げていきます。
「やばい!」と思ったら粘着シートを少し戻して、スクレーパーで⑤の作業を。
注意点
・粘着性が落ちるため、寒い場所では貼らないこと。ボードも室温で。ドライヤーなどでステッカーを軽く温めると、カーブに反りやすく粘着性も高まり効果的です。
・貼った後すぐに滑らず、1日以上置いて定着させましょう。
センスが試される!僕たちのステッカーチューン
トップライダーたちのボードは、気の向くままに貼ったようなジャンクな雰囲気が格好良いのですが、それを無作為に再現しようとすると、なかなか思うようにいかないものです。目指すイメージがあるなら、やはりある程度の設計図が必要でしょう。
MOJANEユーザーたちはどんなところに気を配っているのでしょうか。個性が光るステッカーチューニングを行うユーザーに、ポイントを聞きました。
僕のステッカーチューンは、普段身に付けている好きなブランドや好きなバンドのロゴ、尊敬する人物が発信するメッセージなどを取り入れて、自作しています。ルイス・ハミルトンのサインはインターネット上で見つけた画像をトレースしたものです。こだわりは、全て“本物”のデーターだというところ。 探せばありますからね。
川村 啓史
昔から好きなDRAGONのステッカーを軸に、シンプルに貼りました。位置は特に意識してないんですが、ステッカーを集めるのが好きで、デッドストックを探してショップ巡りを楽しんでいます。
うっちーくん
僕自身は、誰かを参考にするというより、ボードを少しドレスアップするイメージで、デッキパットやステッカーをコーディネイトすることが多くなりました。
モロ
いつ何時、アイディアが降ってきてもいいように、日頃からステッカー収集にはアンテナを張っています。
たかがステッカー、されどステッカー。
この記事では、スノーボードにおけるステッカーの存在とステッカー貼りのテクニックをご紹介しました。
シンボルとして。アートとして。意思表示として。広告として。
ストリートカルチャーの中で、ステッカーが担う役割は多岐にわたります。僕たちはこの小さな”シール”にそれぞれの思いを込めて、スノーボードを飾っています。
次のシーズンに向けて、マイボードのステッカーチューンに挑戦してみてはいかがでしょうか。