この記事では、スノーボードに夢中な子供たちの成長と、練習中の栄養補給について考えます。
スポーツ栄養学にヒントをもらい、次のコンペに挑みましょう!お勧めの本もご紹介します。
もっと上手くなるため、勝つための身体づくりを知ろう
「朝から夕暮れまで、何も食べずにぶっ通しで滑っているんです…」
キッズスノーボーダーのお母さんと話しているとき、そんな話題になりました。ゲレンデに行くと滑りっぱなしで、なかなか食事や休憩を取らないのだとか。
その気持ち、良く分かります。
本人曰く「食べる時間がもったいないし、お腹一杯になっては滑れない。」とのこと。
確かに、ゲレ食といえば、揚げ物・丼物・カレーなどハイカロリーなメニューばかりです。キッズにとって、食事のコントロールは大人以上に難しい事なのかもしれません。
親御さんとしても、いわゆるシャリバテ状態になく、本人が楽しそうに滑っているなら見守るほか無い…という心境も想像がつきます。
この記事で紹介したいのは、「食べたい/食べたくない」とは別に、成長期にあるキッズたちがスノーボードのパフォーマンスを維持・向上させるための「食」についてです。
食べずに滑るリスクを知ろう
スノーボードを思い通りに操るための筋肉や、とっさの判断を司る脳の働き。僕たちはその原動力を、食べ物から摂取しています。
驚くことに、人の身体は空腹状態で運動を続けると、自らの筋肉を分解してエネルギーを生み出す仕組みになっているといいます。
僕自身、ライディング中は楽しさが先行し、食事や休憩は二の次になりがちでしたが、空腹で滑り続けることで身体にかかる負担を意識し始めました。
空腹状態では身体が軽く動ける感覚がありますが、集中力が途切れたり、疲労回復が遅れたり…。怪我を招く危険が増すことは想像がつきます。
キッズたちはどうでしょうか。若さでカバーできるとはいえ、練習でどれだけテクニックを習得しても、成長期の体を蝕んでしまっては本末転倒です。
その一方で「満腹では滑れない」というキッズの意見にも大賛成です。運動中、やみくもに食べればいいとも思えません。
大切なのは、運動中にどんどん消費していく水分とエネルギーを、随時チャージしていくことです。
量ではなく、必要な成分とタイミングを知る
トップアスリートたちは、ベストパフォーマンスを出すために「食」を味方につけています。
例えば、時に3時間を越える長時間の戦いを勝ち進まなければならないテニスプレイヤーは、試合中の休憩時間にバナナを頬張ったり、ドリンクを口にしていますよね。
カーリングの「もぐもぐタイム」も、集中力や正確なストーンコントロールを維持するためのものです。
驚異の集中力で戦う将棋の棋士に至っては、おやつや昼食のメニューがニュースになるほど。これもまた、脳をフル回転させることによって消費したカロリーの補給でもあります。
集中力を維持しながら、より長く、充実した練習を続けるには、水分と糖質が鍵となるようです。
キッズたちに覚えておいて欲しいこと
①怪我や足がつるリスクは水分補給で軽減できます。
水分は一度に吸収できないので、一口ずつでもこまめに飲むこと。ゼリータイプの飲料は、水分補給+空腹感も同時にカバーできるのでおすすめです。
②「甘いもの」を少しづつ摂ることで集中力を維持できます。
ウェアのポケットには個包装の飴やグミなど、一口で食べられる物を必ず入れておくこと。リフト上で糖分をチャージできれば、あと1本、集中できるはずです。
親御さんにお願いしたいこと
ゲレンデでは、片手でポンと口に入れられるような食べ物(エネルギーバーやチョコレート、一口大のおにぎりなど)をいくつか用意しておき、こまめに手渡してあげてください(携帯食についての過去記事も参考になるかもしれません)。
運動後はすぐにドリンクや軽食で糖質を補給すると疲労回復に良いようです。
小さなことですが、日ごろの練習で取り入れてみてはいかがでしょうか。
キッズアスリートを支えるスポーツ栄養学の参考書
キッズアスリートの為の「食」にまつわる書籍は想像以上に多く、参考になる本がたくさん出版されています。また、「アスリート食」や「勝負メシ」「スポメシ」といった言葉も広まり、学術的なテキストからレシピ本まで種類も豊富です。
実際に読んでみた中から、おすすめの本をいくつかご紹介します。
ジュニアアスリートの栄養学 / 著・川端里香(ソーテック社)
成長期の身体とスポーツにおける食事のポイントを詳しく解説。基礎知識とレシピの両方がまとめられているので、最初の1冊としてよさそう。
親子で読める内容だと思います。
一流アスリートに学ぶ最強の食事術/ 著・細野恵美(三笠書房)
千葉ロッテマリーンズ、錦織圭選手、浅田真央選手、高梨沙羅選手といったトップ選手の食事監修をまとめた内容。有名選手が登場するエピソードは興味をもって読み進められます。
大人のアスリートにも読んでもらいたい一冊。
スポめし / 著・細野恵美(朝日新聞出版)
目的別・悩み別に必要な栄養素やレシピが掲載されているので、日々のメニューの取り入れやすい実用的な一冊。
「流アスリートに学ぶ最強の食事術」の著者が監修したレシピ集。身体づくりのためにこれから料理に挑戦したい人にとってもいい一冊になると思います。
アスリート食レシピ / 著・鹿屋アスリート食堂(アスペクト)
国立大学法人鹿屋体育大学と鹿屋市、株式会社バルニバービの共同プロジェクトのスポーツ栄養学に基づいたレシピ本。
プロの料理人の視点が加わり、ひと手間かけた美味しさの参考になります。
JISS国立スポーツ科学センターのアスリートレシピ / 著・国立スポーツ科学センター(主婦と生活社)
スポーツ×成長における食の重要性
スノーボードに目覚めたキッズは、驚くようなスピードで上達していきます。
「上手な人を真似て、滑るほど上手くなる」「上手くなるほど、楽しい」そう実感している彼らが、限られた時間をフルに滑ろうとする姿を誇らしく思います。
彼らを応援する方法は様々ありますが、「食」のサポートは身近な大人にしかできないことです。
僕の学生時代は、スノーボードはスポーツ競技というよりストリートカルチャーの要素が強かったこともあり、「食」や「健康」とは無縁でした。
若く身体が動いていた時代はジャンクフードや不摂生も当たり前でしたが、40代を目前に身体の不調や怪我、疲れやすさを感じ、いよいよ「食」に目を向けることになりました。
長年の習慣を急に変えることは難しいですが、少しずつ取り入れることで「前より良いぞ」という実感もあります。
MOJANEのキッズチームを始めて10年が経ちました。これは僕の知る限りですが、自分の意志で物事を決められるようになると同時に、身体の変化が起きる中学生頃に、大きな怪我を経験する選手が多い印象があります。
手が届くはずのチャンスを逃し、悔しい思いをする姿を何度も見てきました。
スノーボードの道具や技術ももちろん大切ですが、練習時間を充実させるカギを握るのは、最も身近な「食」かもしれません。
まとめ
この記事では、コンペティションに向けて日々練習を重ねるキッズスノーボーダーの「食」について考え、お勧めの本をまとめました。
食に興味がない子でも、自分のスノーボードスキルに関わることとなれば話は別ですよね。スポーツを行う上での身体づくり、上達するため・勝つための一つのパーツとして、必ず役立つと思います。
日常の食事や練習中、大会期間中の食についても親子で話し合ってみると良いかもしれません。