冬道運転に不慣れな初心者ドライバーや道外からのスノートリップを計画中のスノーボーダーに向けて、北海道の冬道運転の心得をまとめます。
北海道の冬道運転攻略法
空港から送迎バスでスノーリゾートに直行!という旅の楽しみ方もありますが、広大な北海道をレンタカーで自由に移動すれば、東西南北のエリア毎に違う雪質と地形に出会えるだけでなく、各地の温泉やソウルフードといったローカルの空気感を楽しむことができます。
運転が不安だという方も、仲間と交代で運転したり、短距離から挑戦してみると、きっと今までにない面白いツアーとなるはずです。
プランニングは、時間の余裕を第一に
まず、運転歴に関わらず、心に刻んでおいて欲しいことがあります。それは、「良い雪を狙いすぎない事」。
車だと、公共交通機関のような制限が無く自由に移動できますが、パウダーを狙いすぎると道民も避けるような悪天候・悪路の中を長時間運転する事になりかねません。
まして、滑ることがメインですから、移動ばかりになってしまっては本末転倒。気象や道路状況によっては、目的地や遊び方を臨機応変に変更することも含みで、楽しむ気持ちが大切です。
冬の移動時間は夏の1.5倍以上と見積り、まずは片道2時間程度の範囲でスケジュールを立てましょう。
冬道運転の装備と注意点
北海道で冬に借りるレンタカーは、寒冷地仕様の4WDが基本だと思います。スタットレスタイヤと冬用ワイパー、寒冷地用のウォッシャー液は装備されているはずです。
スタッドレスタイヤとは言っても、スピードを出したり、急ブレーキを掛けたりすると当然スリップします。タイヤの性能に頼らない運転を意識しましょう。
ワイパーも冬仕様です。長時間車から離れる際は、窓にワイパーのゴムが凍り付いてしまうので、必ずワイパーを立ててください。
寒冷地用のウォッシャー液は、氷点下でも凍りにくく、多少のフロントガラスの凍り付きを溶かすことができますが、じゃんじゃん使えば当然補充が必要になります。雪の降りはじめや雪解けの時期は、泥水などでウィンドウが汚れやすく消費量が増えます。
長期間・長距離移動を予定している方は、他にもいくつか準備が必要かもしれません。レンタカー会社にも装備を確認をしておきましょう。
コンビニやスーパーでも手に入るお助けアイテム
寒冷地用ウォッシャー液や解氷スプレー、スノーブラシ、スコップ、スマホ充電器やモバイルバッテリーなどは、田舎町のコンビニでも販売されていることがあります。
ただ、コンビニに全てが揃っている訳ではなく、小さな町では夜間営業をしていない店舗も多くあります。必要になってから探すのではなく、あくまで補充場所として捉えてください。
また、飲み物や軽食スナックは少し多めに買っておくと安心です。
スノーボーダーが車に常備しているアイテム
雪降ろしの為のスノーブラシ
ルーフに雪がてんこもりに積もったまま走行している人をよく見かけますが、これがとても危険。車が温まってくると、ブレーキを踏んだ時の反動でフロントガラス側にどっと流れてくることがあり、走行中に前が見えなくなったり、雪の重みにワイパーが負けて折れてしまうこともあります。ルーフの雪は必ず降ろしましょう。
凍り付いたフロントガラスには、解氷スプレーが便利です。
除雪スコップ
雪が降りだすと、数時間で車が埋まっていることがあります。宿泊施設でも屋外駐車場が多いので、備えておきましょう。
また、マフラーが雪や風で塞がってしまうと、車内は一酸化炭素中毒の危険が高まります。ホワイトアウトや車中泊でも、このタイプの事故が起きています。
長靴と防寒具
除雪や雪のトラブルに備えて、長靴があると便利です。除雪だけなら、スノーボードのブーツでも代用できますが、くれぐれもブーツのまま運転はしないように。
防寒具は、緊急事用です。吹雪で車が埋まったときなど、一酸化炭素中毒の危険があるときはエンジンを切ります。この時、スノーボードウェアやレイヤードが役立ちます。更に、ブランケットやダウンなどがあると安心です。
牽引ロープ、スタックヘルパー
意外と車に積んでいない人が多いのですが、雪に埋まった時や、埋まった車を助ける時には必須です。また、タイヤの下にいれて脱出するスタックヘルパー(スノーヘルパー)や、道路脇に砂の箱がある場合は、タイヤの周りに撒くことも有効です。
ブースターケーブル
氷点下では、バッテリー機能が低下しやすく、ライトの消し忘れでもバッテリーが上がってしまうことがあります。この場合、他の車の電気を利用してバッテリーを再始動させますが、ブースターケーブルが無ければこの作業が行えません。
路面と気象に合わせた運転テクニック
冬道では、車間距離を十分に取り、急ハンドル、急発進、急ブレーキを絶対にしないと心に誓っていれば基本的には安全です。常にゆっくりと加速し、ゆっくりと減速。ブレーキを踏んで減速するのではなく、アクセルから足を離してエンジンブレーキを使うと良いでしょう。滑っても、焦ってブレーキを強く踏み込まず、小刻みにブレーキを踏み、小刻みにハンドルを操作して対応してください。
また、峠や坂の下り道では、ギアで減速するとより安心です。
アイスバーンの種類とホワイトアウト
圧雪アイスバーン
雪が踏み固まった路面で起こるアイスバーン。除雪・排雪車が通った跡の路面でもツルッとテカっていることがあります。テカッていると思ったら、スピードを出さず慎重に。
ブラックアイスバーン
アスファルトが濡れている様に見えて、凍っている状態。交通量の多いエリアや積雪の無いトンネル内、ロードヒーティングエリアの前後などにみられます。
ミラーアイスバーン
発信・停車・走行数が多い交差点内で起きる部分的アイスバーン。行けるかな…と加速してからの急ブレーキは本当に危険。交差点では信号の色に関わらず減速し、黄色信号になったら無理せず止まりましょう。
ホワイトアウト
降雪や風で前方が見えない!そんな状況になったらハザードを灯けて低速進行。全く見えない状況なら、迷わず停車してください。ほんの10分で視界が良くなることがあります。
停車中は、雪や風向きでマフラーが塞がれてしまうと一酸化炭素中毒の危険が高まりますので、注意してください。
ガソリンは半分切ったら満タン給油
冬道ドライブで最も避けたいのが、ガス欠です。
スタットレスタイヤ、暖房、雪道など、様々な要因により冬は夏に比べても30%程燃費が悪くなると言います。
冬の長距離運転では、ガソリンの価格差やポイントがたまるかどうかを気にしてスタンドを見送るよりも、早めに給油することをお勧めします。
エリアやルートによっては、なかなかガソリンスタンドが見つからないこともあるので、ご注意を。僕も、何度もヒヤヒヤした経験があります。
高速道路のパーキングに隣接するスタンドはやはり高いなと感じますが、背に腹は代えられません。
雪が降っているときはデイライト
降雪や曇天では、信号や標識も見えにくくなります。暗いな、と感じたら昼でもライトを点けて、歩行者や対向車、後続車に自分の存在を知らせましょう。
極めて視界が悪く、低速走行する際はハザードを。
郊外や田舎道では、歩行者や子供の飛び出しにも十分注意しましょう。
野生動物の飛び出し注意!
北海道では、動物注意の標識が頻繁に見られます。冬眠する動物も多いですが、タヌキ、キツネ、エゾシカ、エゾリスなどは冬も活動していて、札幌市内でも見かけます。特に朝方や夜間の山道では、シカが飛び出してくることがあるので注意してください。
もしも野生動物を轢いてしまったら、感染症などの危険がある為、絶対に触れてはいけません。警察へ連絡し指示に従ってください。因みに、動物との事故は物損事故として扱われます。保険を使う際は警察の事故証明が必要です。
長時間駐車は周囲の状況に合わせて
エンジンをかけたまま眠っている間に、雪でマフラーが塞がってしまい排気ガスによる一酸化炭素中毒に…。スキー場の駐車場、道の駅などで、実際に起きている事故です。
車内で仮眠しようというとき、周囲の状況や天候によっては危険が伴うことを覚えておきましょう。
また、ごく稀に、除雪車が寄せる雪に車が埋められてしまうケースもあります。気が付くとパーキングの出入り口が塞がれていたり、車の周囲の雪だけが取り残され、身動きが取れなくなっている車を見かけることがあります。尚、冬の路駐は除排雪の邪魔になるので厳禁です。
タイヤ周りに付いた雪はこまめに落とす
タイヤ周りに雪がみっちり付いていると、ハンドル操作がしにくくなったり、燃費が悪くなったり、タイヤが劣化する要因にもなります。
気温が上がってくると、走行中にタイヤ周りの雪の塊がゴロっと外れてタイヤと車体の間に挟まり、急にハンドルが取られてしまうこともあり、地味に危険なポイントです。
足で蹴り落とす人もいますが、凍り付いてしまうと想像以上に踵に響きます。ゴムハンマーで雪をたたくと落ちるので、1本積んでおくと役立ちます。
わだちに沿って走ろう
車道の除雪が追いついていない時などにできる、走行跡による深い溝が「わだち」です。
主要幹線道路でわだちが出来ることはそう多くありませんが、郊外や細い道では、長期間深いわだちが続くことがあります。
わだちに沿って走行していれば、運転は安定しますが、わだちから外れる時には溝を越えなければならないので、車線変更や右左折はゆっくりと。
溝が深く、車体の腹を擦ってしまう時は、できるだけわだちを避けて走行しましょう。
雪陰から現れる通行人に注意
主要幹線道路から一本外れると、路肩に高く積み上げられた雪の陰から突然歩行者が現れることがあります。
ゲレンデに向かって運転する時間帯は早朝、通勤通学者が多い頃です。住宅地では除雪中の住人も多いので、注意しながら運転しましょう。
また、真冬の北海道は午後4時を過ぎると暗くなり、人影が見えにくくなります。ゲレンデからの帰り道の運転も気を抜かず、眠気を感じたら休憩を取りましょう。
山道やトンネル内のカーブに注意
スリップしやすい峠道、トンネル内、川沿いの道などのカーブは、カーブに差し掛かる手前で減速するのが鉄則です。
特に、大きな山に向かうときは、ヘアピンカーブが続くことがあります。
「滑る!」と感じたら、小刻みにハンドルを動かしながらカーブを進むとスリップしにくいです。これは、友人タッツに教わった運転テクニックです。
とは言え、慣れるまでは慎重に運転してください。
低温+大雪では視界の確保が第一!
-10℃を下回るような冷え込みと大雪が重なった時は、ワイパーの下に雪が溜ったり、ワイパーが凍りつくことを防ぐため、車内の暖房をフロントガラスに一点集中で視界をキープしましょう。
特に冷え込みが厳しく風が強い時は、走行中にウォッシャー液を出すとフロントガラスが一気に凍り付いて、視界が真っ白になってしまう事があります。
ウォッシャー液を補充する際は、必ず寒冷地用のものを薄めずに使いましょう。
降雪時の視界はゴーグルで確保
大雪で視界が悪い時は、スノーゴーグルをかけてみてください。
ハイスペックレンズの本領発揮です。陰影や凹凸が見やすくなることがあります。
信号に雪が張りついて何色か見えにくい時も、ゴーグルのレンズ越しなら判別できることもあります。
ただ、ゴーグルをかけても見えない時は、無理をせずに走行を中断しましょう。
実は初冬や春が危ない
3月に入ると路肩の雪の壁もすっかり低くなり、乾いた路面が出ている事が多くなります。
ただ、1日の寒暖差は激しくなり、暖かい日と真冬日を行ったり来たり。
昼間に溶けた雪が日暮れと共に凍結し、朝の陽ざしで路面が少し溶けてくると、最も危険なツルツル路面の完成です。
春先や、冬の初め11月下旬~12月は、あらゆるタイプのアイスバーンが出現し、最も事故が多い季節です。
煽られてもセーフティドライブで
比較的道幅の広い北海道ですが、大雪の影響を受けると主要幹線道路でさえ3車線が1.5車になることがあります。
繁華街を過ぎると、視界や路面状況が悪くても、なかなかのスピードで走行している車やトラックは多いですが、煽られても焦らず、お先にどうぞの精神で、譲りながら安全運転を貫きましょう。
札幌近郊の要注意エリア
2020-2021シーズンは、道内各地で記録的な降雪を観測しました。
特に、岩見沢、三笠、美唄といった豪雪地帯は、国道脇に2m以上にも雪が積み上げられ、3車線が1車線になるという状況が長期間続きました。札幌から峠越えなく行けるスキー場が点在するエリアですが、吹雪による交通障害が起きやすく、高速道路の通行止めも頻繁に起こります。
道央自動車道・江別東IC〜深川JCTの間は吹雪きによる通行止めが多い区間です。ひとたび高速が通行止めになると、国道12号線は渋滞に。普段なら1時間程度の距離に、3時間以上かかった日もありました。
一方、豪雪地帯として知られるニセコ・倶知安方面は、街の除排雪インフラが完璧に整っており、意外にも運転に支障は無かったりします。ただ、札幌方面から向かう時、230号線中山峠は慎重に運転してください。特に、スノーシェルター内のカーブでは事故が多発します。
また、札幌から道北まで伸びる275号線の当別エリアは、ホワイトアウトが起こりやすいことで知られています。
この他、凍結しやすい海沿いのルートや橋、トンネルの出入り口を走行する際も、路面状況に十分注意してください。
トラブルの備えと役立つサイト
レンタカーを借りる際は、もしものトラブルに備えて、緊急時の連絡先と対処手順、保険についても予め確認してください。
目的地までのルートや天候、路面状況は1週間前にはチェックを開始しましょう。
・道路のトラブルは全国共通 #9910 (24時間受付・無料)
落下物、逆走車、路面に開いた穴など、車両の通行に支障となる道路の異状や緊急事態を発見した時は通報を。
この他、各ゲレンデのSNS公式アカウント等にもこまめにアクセスして、情報収集を行ってください。
ゲレンデの情報発信は概ね毎朝行われているので、「今朝は積もりましたか?」と気軽に電話をかけるのは控えましょう。
まとめ
この記事では、冬道運転に不慣れなドライバーに向けて、装備と運転のポイントをまとめました。
長期休暇が手に入ったら、是非レンタカーを借りて、いつもと違うスノートリップに挑戦してみませんか?
道内でおすすめのローカルゲレンデは、MOJANE BLOGでご紹介しています。